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オオミミズ

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それは去年の夏、一人の少女が体験した出来事である。

高校生のノリコは、所属する女子陸上部の野外合宿に参加した。
そこでは、恒例のハイキングを行う。
好天に恵まれ、都会育ちの彼女には心地良い風がとても新鮮だった。
登山道の脇に花が咲いていた。
「わあー、きれい!」
何という花だろう?何か、不思議と心が引き寄せられる。
ふらふらと近づき、つい見とれてしまった。
「あっ、いっけなーい」
僅かな時間だと思ったが、すっかり置いてきぼりにされてしまい、必死で皆の後を追う。
しかし、不思議な事に追い着く事が出来ない。
そればかりか、あれほど居た他のハイカーに全く出会わないのだ。

とても不安になった。遭難したのだろうか?この山には自分しか居ないのではないか?
そればかりか、突然、天気が崩れ、降り出した雨が雷雨となって追い討ちをかけてきた。
雨具を忘れた彼女は、ずぶ濡れになりながら山を彷徨い、日が暮れかかった時に一軒の山小屋に逃げ込んだ。

中には誰も居ない。
有るのは、ランプが一つだけ。
寒い、寒い。
夏といっても、山の夜は冷え込む。
濡れたジャージとトレパンが体温を奪う。
暖を取ろうとランプに手をかざしても、気休め程度にしかならない。
そうだ、雪山で遭難した時には、お互いの体温で体を暖め合う。
素適な男性に暖めてもらえるなら…処女を捧げても構わない。
寂しい。誰でもいいから助けて欲しい。

疲労が睡魔となってノリコを襲った。
眠ったまま、凍え死んでしまうのだろうか。
うとうとしていた時、一気に眠気が醒めた。
叫び声を忘れる程、背筋が凍り付いた。
自分以外誰も居なかった筈の山小屋に、何かが居るのだ。
一瞬、大きな蛇かと思った。飼い主が山に捨てたのかと。
だが、鱗や、それらしい模様は無く、茶色で節の様な縞が有り、ぬらぬらした液体に覆われている。
まさか?そんな。
それは、長さ数メートルは有ろう、大きなミミズだった。

外は大雨、中には得体の知れないオオミミズ。
行き場を失った彼女は、小屋の隅でガタガタ震えながら、そのオオミミズを監視した。
こんな生き物が居るなんて…よりによって、大嫌いなミミズの化け物だ。
暫く様子を見ていたが、ピクリとも動かない。死んでいるのだろうか。
だが、極限状態で人は何をするか分からない。
ノリコは、そのオオミミズに近寄っていった。

そっと指で触れてみる。
「うわっ!」
これほど気持ちの悪い感触の生き物が他に有るだろうか。
まるで、体の内側と外側がひっくり返っているみたいだ。
指にねっとりと纏わり付いた液体は、いくら拭っても拭いきれない。

よせばいいと思いながらも、手のひらを当ててみる。
トクン、トクン。
体液が流れる感触。やはり生きている。
そして、とても大切な事に気付いた。
そのオオミミズは、人肌の様に暖たかいのだ。
悩んだ挙句、一大決心をした。生死に係わる寒さから逃れる為には、この方法しかないと。

 

ノリコは、濡れた服を脱いで全裸になった。
そして、正座をしてオオミミズの頭を膝に乗せて心から願った。
「お願い、私の体を暖めて」
すると、息を吹き返したようにオオミミズが動き始めた。

オオミミズは、ノリコの裸体をゆっくりと舐めるように巻き付いていく。
脇腹から背中へ、背中から腹へ、そして再び背中へ。
「うっ!…ううっ!」
ノリコは、身を捩じらせながらも生々しいミミズの感触に耐えた。
(我慢しなくちゃ!我慢しなくちゃ!)
やがて、胸から下は完全に巻き包まれた。自由になるのは両腕だけだ。

横になり、じっと堪えるが、少し動かれるだけでゾクッとする。
(こんなのがアソコに少しでも触れたら…)
脚だけはしっかりと閉じていた。
でも、とても暖かい…。

あれほど気持ち悪かったのに、暫くすると何故か心地良さを感じてきた。
白い肌は上気立ち、乳房が薄っすらと紅に染まっていく。
「あっ…あっ…あっ」
まだ、あどけなさの残る唇は、少女とは思えない程の妖艶で甘い喘ぎ声を漏らし始めていた。

ノリコは、オオミミズをぎゅっと抱き締めた。
すると、オオミミズも彼女をぎゅっと締め返してくる。
何という力強い包容力だろう。男の子に抱き締められるのも、こんな感じなのだろうか。
「もっと…強く抱き締めて…」
願いに応える様に、更に強く締め付けてくる。
「うっ!くっ!」
少し苦しかったが、不思議な心地よさだ。

今度は、両手でオオミミズを優しく撫でてみる。
オオミミズも、長い胴をくねらせてノリコの身体を愛撫した。
グチャッ、グチャッ。
淫猥な音が、ノリコの心の奥に秘めた性欲を掻き立てる。
「気持ちいい…気持ちいいよぉ」
まるで、何百枚もの舌で全身を舐め回されているようだ。

オオミミズが両脚の間に割って入ろうとした。
「だめ!そこは…そこだけは」
脚を堅く閉じてガードしていたつもりが、欲望に負けてしまい許してしまう。
オオミミズは、胴体をノリコの股の間にあてがった。
「はあうっ!」
自分以外の者に初めて触られてしまった。
ジュブッ、ジュブッ。
オオミミズの胴体が、執拗に陰唇を擦り付ける。
「ああああああっ!」
粘液と愛液が混ざり合い、尻へ流れる。
えも言われぬ快感に、ノリコは悶え狂った。
「いっちゃうっ!…いっちゃうっ!…んっ!…んっ!…んんんんんんんっーー!!」

その夜、晩くまでノリコとオオミミズは激しく絡み合った。
ランプで映し出される、自分とオオミミズが一体になった妖しい影を見つめながら、何度も何度も昇り詰めた。
そして、いつの間にか疲れて眠ってしまった。

窓から差し込む暖かい日の光で目を覚ました。
清々しい朝だ。
ノリコは、はっと気が付いた。
体には、まだ生暖かい粘液がべっとりと付いる。
夢ではない。オオミミズは、彼女が目覚める直前まで寒さから身を守ってくれたのだ。
しかし、オオミミズは何処にも居なかった。
小屋の外の湧き水で体を洗い、湿った服を着て下山を始めた。
無事に皆に再会する事が出来た。
雨に遭った事、山小屋の事を話した。もちろん、オオミミズの事は内緒だ。

今年の夏、ノリコは合宿で再びこの山を訪れた。
そして、その場所で、あの花を見つけた。
ふらふらと、無心で花に導かれるところを、友人達に呼び止められた。
「ノリコ、行っちゃうよー!」
「あっ、待ってよ、みんなー!」
ノリコは、足早にその場を離れた。
清々しい夏の風が花々を揺らしていた。

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