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化け狸と少女の尻尾 その1

周囲を岩壁に包まれた洞窟の中に1人の少女がいた。
どういった原理か岩壁が放つほのかな光に照らされた少女は巫女装束に身を包んでいる。
薄く汗を浮かべ、頬をわずかに上気させながら少女が視線を向ける先には、小柄な少女の倍はあろうかという大狸がいた。
実際の狸というよりは信楽焼きの置物に近いずんぐりとした体型のその化け狸こそが、今回その巫女装束の少女――日和に与えられた任務の標的だった。
人間の言葉、しかもなぜか関西弁を放っていた化け狸の口から今迸っているのは洞窟を崩落させるのではと思うほどの絶叫だ。
その原因は風船のように膨らんだ腹に刻まれた1筋の裂け目。
それを作ったのは彼女が手に持っている刃渡り3寸ほどの短刀だった。
(手応えはあったし、これで終わってくれれば)
大きさこそ化け狸の巨体に比べてあまりにも頼りない武器ではあったが、霊的に強化されたその短刀は妖怪の類にはわずかな傷でも容易に致命傷となるはずだった。
永遠に続くかと思われた化け狸の断末魔の絶叫が萎むように小さくなり、そのままゆっくりと後ろへと倒れていく。
倒れた化け狸はそのまま動かない。
だが日和はまだ気を緩めてはいなかった。

こちらを油断させる演技かもしれないのだ。
それを確認するために慎重に距離を詰めていく。
いつ化け狸が動き出してもいいように短刀を構えながら。
果たして日和の予想は当っていた。
手を伸ばせば届くほどまで近づいたところで化け狸の体に異変が起きる。
しかしその変化の内容は日和の予想していたものとは全く異なるものだった。
日和自身が付けた化け狸の腹にある大きな傷。
その傷から元の化け狸をそのまま縮小したような姿をした無数の小狸が飛び出してきたのだ。
大きさはまちまちで、大きいものでは成人男性の握り拳程度のものから、小さいものでは虫程度のものまでいる。
「きゃっ……!」
反射的に後ろに飛び退りながら短刀を振る日和。
破魔の短刀の軌道にいた何匹もがあっけなく消滅するが、そんなものは後から後から涌いて出る小狸達から見れば無視できるほどの損害なのだろう。
1対1ならばともかく、全く怯むことなく押し寄せてくる大群の前に短刀1本ではあまりにも分が悪すぎた。
手足に小狸がしがみついてくる感触。
次の瞬間、手足にしがみついる小狸の重さが何倍にも増した。
鉛の固まりでもくくり付けられたような重さは、普通の少女に比べれば鍛えている日和でも耐えられるものではない。
抵抗できたのも一瞬、すぐに四つん這いの姿勢で立ち上がることすらできなくなってしまった。

「あててて、まったく殺す気かっちゅうねん」
内容の割に緊張感のない声とともに、傷1つない腹をさすりながら大狸が体を起こす。
「そんな……、あれが効いてないの!?」
「んー、ちゃんと効いたで。せやから治療費は払ってもらわんとな」
大狸の口の端がいやらしく上がる。
戦闘の最中とは違い、値踏みするような粘ついた視線を感じ日和は背筋が寒くなった。
治療費と言っても目の前の大狸が人間の金を欲しているわけがないことは、それほど実戦の経験がない日和にもわかる。
「ち、治療費って……ひゃぅ!?」
1段高くなった日和の声が洞窟の中に反響する。
小狸の中でも特に小さいものたちが袖や裾から侵入を開始したのだ。
追い出そうにも手足を動かせない日和はせいぜい身体を揺することくらいしかできず、その程度では明確な意思を持って進んでくる狸の食い止めることはできない。
そして巫女装束の下に潜り込んだ小狸は思い思いの場所に陣取ると舌を這わせ始めた。
膝裏、腋下や脇腹などの敏感な部分で這いまわる軟体の感触に日和は身を捩る。
「や、やだ……入ってこないで。くすぐったいから舐めないでぇ」
「動いて汗かいたせいか、ちょっとしょっぱいで」
感覚が繋がっているのだろう、大狸の口にした感想に日和は頬を染める。
ただ、そんな羞恥は次にされることのまえでは文字通り前菜のようなものだった。
「そ、そんなとこ匂いかいじゃだめぇ」
小狸の1匹が下腹部でクンクン鼻を動かしているのが感じられたのだ。
「ここは小便の匂いがしよる。ちゃんと拭かなあかんで」
大狸の無遠慮な言葉の直後、少女にとって最も大切な部分を舌がなぞった。

「ひうううぅぅぅ」
くすぐったさを上回る怖気に日和の口から細い声が上がる。
だが何度も往復する内に不思議な感覚が沸き上がってきた。
今も全身を這いまわる舌によるくすぐったさとは少し異なる痺れるような感覚。
「お、こっちの方が反応しとるわ」
「いたっ! いたいよぉ!」
下腹部に意識を向けていたところで、いきなり別のところを襲った痛みに日和は悲鳴を上げた。
下腹部と同様、まだ未成熟で膨らみかけたばかりの胸に取りついて舌を這わせていた小狸がその先端に歯を立てたのだ。
先端が噛み千切られそうな鋭い痛みに涙を浮かべると、今度はまるで慈しむように優しく舌を這わされる。
ジンジンとした痛みが解きほぐされて、下腹部から生まれるものとは似ているようで異なる何かが込み上げてくる。
それを繰り返しされている内に痛みは減り、その不思議な感覚だけが強くなってきた。
頭の芯が痺れるような感覚の中で終わりが近づいてきているのがわかる。
そこへ至ればもう戻れないだろうという直感的な恐怖と、早くそこへ辿り着きたいという本能的な欲求。
「やだ、なにかくる。きちゃうようぅ!」
唯一自由に動かせる首を振って耐えようとする日和。
しかしそれを嘲笑うように小狸は責めの手を緩めない。
「んひゃぁ、だめ、だめええぇぇぇ!」
止めは日和の秘唇で本人も知らぬ間に硬さを増していた小粒を甘噛みされたことだった。
包皮の上からとはいえ、一瞬で頭の中を白く焼き尽くされ初めての絶頂を味あわされる。
「あ、あぁ……」
背筋が反り返り搾り出すような声が漏れる。
そして関節が砕けんばかりの痙攣の後には、反動のように弛緩が訪れた。
下腹部に生まれた尿意。
止めなければと思う暇さえなく溢れ出した小水が袴の緋色を濃く染め上げていく。

「せっかく綺麗にしてやろう思たのに、また汚してどうすんねん。これはお仕置きせなな」
「お、おしお……ひゃ」
新たに不浄の穴に生まれた舌の感触に、日和は反射的にそこをキュッと窄めた。
その反応をまるでたしなめるように、全身で我が物顔で動きまわる舌の動きが激しさを増す。
倍増するくすぐったさに意識が逸らされた隙に、肛門を狙っていた舌が先端を潜り込ませてきた。
先端だけとは言え、体の中で別の生き物の1部が入ってきている感触に日和は身を震わせる。
しかも小狸は舌先だけではなく、その全身を潜り込ませようとしてくるのだ。
「はいってくるぅ。こんなの」
もはや力が入れられない日和の括約筋は驚くほどの伸縮性を見せ、小さいとはいえ狸の全身を飲み込んでいく。
「むりぃ……むりだよぉ……」
なんとか全身を捩じ込もうと身を捩る小狸の体毛に尻穴の中と外を同時にくすぐられる。
やがて尾だけを残して小狸が腸内へと納まると、まるで日和自身から尾が生えているかのようになってしまった。
「はっはっはっ、四つん這いで尻尾まで生やしとる。こりゃ譲ちゃんの方がよっぽど狸みたいやで」
「う、うぅ……」
大狸の勝ち誇った声が響く中で、日和は体内の異物感にただ呻き声を上げることしかできない。
だがそれもわずかな間だけだった。
息苦しいほどの異物感が、あたかも氷が溶けるように薄れていくのだ。
1秒ごとに楽になっていく自らの体に、日和は安堵よりも不安を覚えていた。
「中に入ったんが同化しとるんや。これで一生尻尾付きやな。まあどうせここでずっと暮らすんやから問題ないやろ」
「そ、そんな……」
自分が人でなくなっていく。
不安を肯定する言葉に日和の中に絶望感が込み上げてくる。
「穴が塞がっても、排泄物はそいつが吸収してくれるから心配せんでもええで」

「ほなせっかく尻尾が付いたんやから、それ使ってみよか」
大狸のその言葉とともに、日和の尾がちょうど自身の秘園を覆うように身体に密着し前後に動き始めた。
「ふわぁ……や、やぁ……」
尻尾の毛が刷毛のように秘唇全体を擦り上げる。
特に最も敏感な小粒にチクチクと刺さってくる痛痒感がたまらなかった。
加えて日和の意思に反して分泌される愛液を尻尾が吸うことで生み出される快感が一層高まってくる。
先ほど初めて経験した高みが、再び急速に近づいてきた。
「だめ、また……あ、あ、あああああ!」
加減を付けて噛まれる胸の先端や全身を這いまわる舌の感触に後押しされて、日和は成す術もなく2度目の絶頂へと打ち上げられた。
2度目の絶頂に日和の全身がガクガクと痙攣する。
それが治まる頃、ようやく下腹部に張りついていた尾がその身を離した。
しかしそれによって日和が安堵を覚えたのは一瞬のことだった。
今度は秘唇全体ではなく、その中の1点に尾の感触が触れたのだ。
絶頂の余韻で霞む頭の中でも、それが何を意味しているのかがわかった。
「そ、それだけはぁ……だ、ひゃわああ」
静止の言葉も言い終わらぬ内に、滴るほどに粘液を吸った尾が膣内へと一気に埋没する。

先端から根元の方向に撫でられることで逆立った毛が膣襞と絡み合い、痒みと快感の混ざり合ったものが爆発的に沸き上がる。
「おーおー、キュウキュウ締め付けよる。そんなにええんか?」
「ひゃ、ひゃいぃ……きもひいいれすぅ……こんなの、おかしくなるぅ……」
経験したことのない感覚に翻弄され自分が何を言っているのかもわからない。
ただ大狸の質問に感じているままを口にする。
「そうかそうか、正直になった褒美に尻尾の方の感覚も繋げたるわ。良すぎて狂うかもしれんけどな」
直後、尾によって膣壁を擦り上げられる感覚に、尾の側が膣壁によって締め付けられる感覚が加わって日和の蕩けかけた脳を貫いた。
大狸の言葉通り気が狂いかねない快感に、もはや言葉にならない叫びが上がる。
地面に四つん這いになり尾を生やし、言葉とも呼べない吠声を上げながら快感を貪ることだけに集中する。
その姿にもはや人間としての尊厳はなく、完全な牝と成り果てていた。
そんな日和の姿を眺めながら大狸は満足そうに笑みを浮かべた。

 

 

(別れ道か……聞いてないわね)
黒を基調とした修道服とヴェールに身を包んだ少女、クリスは事前に聞いていた情報との食い違いに足を止めた。
太陽の下であれば宝石のように煌く青い瞳を、それぞれの道の先へと順番に向ける。
だが、岩壁が放つほのかな光だけが頼りの洞窟の中では、その奥まで見通すことは到底できそうにない。
それでも、クリスの持つ視覚とは異なる感覚が多少の情報を教えてくれてはいた。
向かって右側の道から感じられるのは、かなり強大な妖の気配。
これがたぶん、話に聞く化け狸のものだろう。
そして向かって左側の道。
こちらから感じられるものは、いささか奇妙なものであった。
人と妖、本来根本的に異なるはずのそれが混ざり合った気配。
そんな気配を持つ存在に、クリスはいくつか心当たりがあった。
(憑かれたか……)
もう1つの可能性としては、人と妖の間に生まれた子どもというものもある。
だが、いかに歳経て変化したとはいっても元は狸、人との間にそうそう子を儲けることなどできるはずがない。
加えて、この洞窟にある気配は化け狸と思われるものが1つと、その奇妙な気配が1つだけだ。
脳裏に浮かぶのは、自分と同じ年頃の少女。
クリスと同じく人に仇なす存在を狩ることを生業としている彼女、日和がこの洞窟で消息を断ったのは2週間ほど前のことだった。
もしこの奇妙な気配が化け狸と日和の子であるとすれば、彼女自身はもうこの洞窟に、というよりこの世にいないことになってしまう。

(別に日和の生死なんてどうでもいいけれど)
こんな事をしている以上、命の危険など常に身近に存在している。
死ぬのは単に本人の力が足りなかっただけのことだ。
だいたい、クリスと日和は友人だったわけではない。
日和の方がどう思っていたかは本人に聞かない限りわからないが、少なくともクリスにそのつもりはなかった。
仕事の都合上、時には協力相手として、時には競争相手として、顔を合わせたのもせいぜい両手の指で足りるほど。
年の頃が近い事もあって、同業者の中では2人はライバルとして認識されていた。
そしてクリスとしてはむしろそちらの方がしっくりとくる。
日和が倒せなかった相手をクリスが倒せば、どちらが優秀かということを証明できる。
それが、クリスがこの洞窟に足を運んだ理由だった。
(まあ、生きているのなら、ついでに助けてあげてもいいのだけれど)
そんなことを考えながらも、周囲の岩壁や地面を念入りに調べていく。
(左側はまだできてそれほど時間が経っていないか……)
左右の道と、クリスが今まで歩いてきた出口に繋がる道を比較してそう結論付けた。
本来1本道であるという情報と合わせれば、化け狸が捕らえた日和を監禁するために左側の道を作ったと考えるのが妥当だろう。
わずかな逡巡の後、クリスは左側の道に足を向けた。
別に日和の救出を優先させたわけでもなければ、右側から感じる力の大きさに怖気づいたわけでもない。
これだけ大掛かりなことができるだけの力を持つ相手ならば、少しでも情報を集めておくのが得策だと思っただけだ。
直接対峙したであろう日和の話が聞ければ、まあ作戦を考える上での足しくらいにはなるだろう。

あっけないほど簡単に、クリスは左側の道の最奥にまで到達していた。
そしてその行き止まり、少しだけ広くなっている場所の中心にクリスは目当ての少女を発見した。
以前会ったときに身に着けていた日本の神に仕える者が着るという朱と白の衣は今はなく、全裸で手足を折り畳むようにして地面の上に丸くなっている。
(寝ているのか。……っ!?)
岩陰から息を潜めて観察していると、それまで日和の身体の陰になっていた場所から人には存在しない器官が姿を現した。
(尻尾……ということは、やはり……)
根元の部分はクリスの位置からでは確認できないが、それが床を打った時に日和が身じろぎをしたところを見ると感覚はあるらしい。
ここに至るまで、特にクリスの侵入を阻むための仕掛けの類は存在していなかった。
そしてそれはこの広間に関しても同じように見えるし、日和の身体に鎖のような逃走を妨げるための何かが付けられている様子もない。
それはつまり中から外へ出る際にも障害が存在しないということのはず。
少なくとも物理的には。
にもかかわらず日和がここに留まっているということは、精神的な束縛が施されている可能性が高い。
これからどうするか、クリスが思案していると、不意に日和が身体を動かした。
気怠げにのそりと身を起こし、四つん這いの状態で顔を上げて鼻を鳴らし始める。
「んんー、あれ……クリスちゃん?」
完全に気配を消していたはずなのに突然名前を呼ばれ、クリスは息を詰めた。
日和はなおも鼻をクンクン鳴らし続け、続けてあたりを窺い始める。
その仕草はその尾が示す通り本物の狸にでもなってしまったかのようだ。
ただ、どうやら人間だった頃の記憶はあるようだし、クリスの存在に気付いても敵意のようなものは感じさせない。
こうなってしまっては隠れていても無意味と判断し、クリスは岩陰から姿を現した。

「ああー! やっぱりクリスちゃんだ-!」
クリスの姿を見た日和は満面の笑みで駆け出した。
四つ足という人間が走るにはかなり不便な状態であるにもかかわらず、それを感じさせない速さ。
クリスも気を抜いていたわけではない。
ないのだが、あまりにもあけすけで邪気のない笑顔に呑まれて一瞬だけ反応が遅れてしまった。
せめて少しだけでも悪意のようなものがあれば、経験から反射的な行動が取れたかもしれない。
体当たりと言ってもいいほどの勢いで肩に体重をかけられ、そのまま押し倒されてしまう。
覆い被さってくる小柄な体躯。
首筋にかかる熱い息に、逆にクリスの心に寒気が走った。
この体勢、そのまま首に噛み付かれでもしたらただではすまない。
「ちょ……離れなさい」
未だに敵意のようなものは感じないが、例えば子どもが笑みを浮かべながら虫を殺すように次の瞬間歯を立てられていてもおかしくない。
元々、年齢の割りに幼さの残る話し方をする少女ではあったが、さっきの様子はそれに輪をかけて幼すぎた。
「クリスちゃん、クリスちゃんだー!」
幸いにもクリスの予想は現実のものとならず、日和は一頻り頬ずりをすると満足したように密着させていた上半身を起こしていった。
とはいえ、まだ日和の身体は仰向けに倒されたクリスの上に馬乗りになった状態である。
クリスも何とか跳ね除けようとするのだが、両肩に置かれた日和の手はまるで昆虫の標本を止めるピンのように、クリスの身体を地面の上に固定して放さない。
「んんぅー」
と、日和はじっとクリスの顔を見つめ、今度は目を閉じ軽く口を突き出すようにして上半身を倒してくる。
何をしようとしているかは一目瞭然だった。
「……ッの、いいかげんにしなさい!」

2人の身体の1部が接触する。
ただしそれは柔かな唇ではなく、頭部の中でも特に固い部分の1つである額同士でだ。
人間のパーツ同士がぶつかったとは思えないような、重い音が洞窟内に響き渡る。
さすがにこれは効いたのか、日和の身体が後ろへと飛び退いた。
(なんて石頭……)
ようやく自由になった身体を起こし額をさする。
加減をする余裕もなかったせいで、頭の芯まで響くような痛みがまだ残っている。
自分からやったクリスですらこの状態、目を閉じていて心構えができていなかった日和は唸り声を上げながら地面でのたうち回っていた。
その身体が突然ピタリと止まる。
あまりに唐突なその変化に、クリスの脳裏に嫌な想像が走り抜ける。
「ん……、あれ?」
しかしそれは杞憂だったらしく、むくりと身体を起こすと周囲をキョロキョロ窺いはじめる。
その視線はクリスに向けられたところで止まった。
「クリス……ちゃん? あれ、でもどうして……」
その反応に、クリスは胸の中でほっと息をついた。
どうやら正気に戻ったらしい。
「その呼び方は止めなさいって言ったはずよ」
ちゃん付けで呼ばれると、日和の側にそんな気はないにしてもまるでキリスト教徒であることをバカにされている気がするのだ。
さっきの仕返しも兼ねてデコピンを1発。
「いっ―――――!」
額に追い打ちをかけられた日和が再びのたうち回る。
今度はそれが治まるまでに数分の時間が必要だった。

「クリス……や、やさしくしてね?」
目の前で四つん這いになった日和が、こちらに尻を向けながら言う。
羞恥のあまりか、高く掲げられた日和の尻は左右にゆらゆらと揺れ、誘っているかのようにすら見えた。
その腰の動きに合わせて左右に揺れている尾をとりあえず掴んでみる。
「ひぁん!」
「ちょっと、変な声出さないでくれる?」
ただでさえこんな状況では、変な気持ちが込み上げてきそうになるのに。
「だ、だって……やさしくって言ったのに……」
次はクイクイッと引っ張ってみる。
今度は日和の背中が2回跳ねた。
(これはなかなか面白いかも……)
思わずその行為に没頭しそうになる。
湧き上がる嗜虐的な気持ちを理性で押さえ込んで、クリスは尾から手を離した。
「これは私には無理ね」
日和に生えたこの尾を何とかできないかと調べてみたのだが、クリスはあっさりとそう結論を出した。
「そんなぁ……クリス、悪魔が取り憑いた人とか助けたことあるんじゃ……」
「私の専門は幽霊や悪魔みたいな実体のないタイプだから。この手の肉体的に融合しているのは苦手なの」
そう言ってやると日和は目に見えるほど落胆した。
まあその気持ちもわからないでもないだろう。
こんな物をいつまでも付けておこうと思える方が珍しい。
「場所が場所だけに、無理に引き剥がそうとすればこれからの生活に支障を来しそうだし。一応聖水かけてみる?」
修道服の下から透明な液体が入った瓶を取り出しながら聞くと、日和はブルブルと震えながら断った。
「まあ、それが賢明ね。今のあなた、人と妖が混ざり合ってるから、ここを出たらちゃんとした所で処理してもらいなさい」
そう言って頭を次の問題に切り替える。
ここを出た後のことを考えるのは、それこそここを出た後でいい。

「あれだけ大騒ぎしたら、さすがに気付かれてるだろうし」
可能ならば不意を打てればと思っていたのだが、さすがにそれはもう望み薄だろう。
まあ、仮に騒がなかったとしても、匂いなり何なりで気付かれていた可能性も高いだろうが。
とはいえ、クリスは1つだけ気になる点があった。
何故あれだけ大騒ぎしたにもかかわらず、当の化け狸が姿を現さないのか。
(舐められているのか……? だとすればそれを利用して……)
そんなことを考えていると、
「あ、それは大丈夫だと思う。たぶん気付いてないと思うよ」
手で胸と股間を隠しながら、日和が前提から覆すようなことを言った。
クリスとしても全裸でいられるといささか落ち着かない部分もあるのだが、かといって今は着せておけるようなものはない。
クリスはロングワンピースの下には下着しか身に着けていない。
ワンピースの方は中に色々と道具を仕込んであるため、これから化け狸と一戦交えることを考えれば貸すわけにはいかないし今身に着けている下着を他人に貸すのはさすがに躊躇われた。
「ここに来る途中、別れ道あったでしょ? こっちの物音とか、向こうには聞こえないようになってるの」
クリスの疑問に答えるように、日和は化け狸が気付いていない理由を説明する。
だがそれは新たな疑問を生むだけだ。
確かにそんな仕組みになっているなら気付かれていないかもしれないが、今度は何故そんな風にしているのかがわからない。
「そんな風にしていたら、こっちで何かあった時どうするの? 実際私が今こうやって来てるわけだし」
日和自身は正気を失っていて本人の意思で逃げることはないとしても、あまりにも無用心すぎる。
「あ、あの……ね。この洞窟は……元々1本道だったの」
さらに問い詰めると途端に日和の言葉が要領を得ないものになっていった。
「それは聞いてるけど。あなたを閉じ込めて……いたわけではないけれど、とにかくあなたを置いておくためにこちら側を作ったんじゃないの?」
「うん、そう……そう、なんだけど……」
加えて、日和の声は段々小さくなってよく聞き取れなくなっていく。

「あのね、この2週間の記憶ってぼんやりとしか思い出せないんだけど」
イライラしてきたクリスがデコピンの構えで脅すと、日和はそう前置きしてようやく話し始めた。
しどろもどろになりながら日和の話した内容を要約すると以下のようなものになる。

『尾を生やされ、そこから生み出される快楽を教え込まれた日和は寝ても覚めても自慰に耽っていた』

『最初は喜んでいた化け狸も、四六時中喘ぎ声を聞かされていては寝ることすらできないと激怒』

『防音処理を施したこちらの道を作って隔離された』

顔を真っ赤にして語り終えた日和を前に、クリスは長々と溜め息を吐いた。
(まあ、おかげで助かったわけだし、この子も正気を失っていたから仕方ないんだけど……)
実際、化け狸と日和が同じ場所にいたら、もっと面倒なことになっていただろう。
理屈ではそうわかっているのだが。
クリスがもう1度深い溜め息を吐くと、日和はますます顔を赤く染めて俯いてしまった。

「ふぅん、確かにそれは、あなたの苦手なタイプね」
気を取りなおし、日和自身が化け狸と戦った時の話を頭の中で整理する。
霊刀による一点突破の一撃必殺を身上としている日和にとって、数に任せて押し寄せてくる相手は遠距離型の相手と並んで最も苦手なタイプだろう。
それに対してクリスの方は、その手の質より量なタイプはむしろ得意な相手と言える。
「クリスなら大丈夫だよね。いっぱい出てきてもまとめて燃やしちゃえるし」
クリスの戦闘スタイルを知っている日和は随分と気楽にそう言ってくれる。
だが、クリス自身はそこまで楽天的にはなれなかった。
確かに日和が化け狸に遅れを取ったのは相性の悪さが原因の1つだろう。
だが、その相性の悪さが偶然ではなく、狙って作られたものだとしたら話は全く違ってくる。
化け狸の手札が日和の話だけならば勝つ自信はある。
彼女だって一応はプロなのだから、普通なら日和にだってこのくらいのことはわかるだろう。
それができないのは、クリスヘの信頼はもちろんだが、一刻も早くここから出たいという思いから希望的観測にすがってしまっているだけだ。
クリスの手前明るく振舞ってはいても、この2週間のことで参っていないはずはない。

黙って思考を巡らせていたクリスの様子に、日和もようやくクリスの考えていることに思い至ったのか表情を曇らせた。
そして何事か口にしようとして、けれどその言葉は腹から響いたクルクルという音に遮られてしまう。
「あなたという人は……」
「ご、ごめんなさい……」
シュンと俯いた日和は、次の瞬間ばね仕掛けの人形のような勢いで顔を上げた。
その顔に浮かんでいるのは焦りの表情だ。
「ど、どうしよう、もうすぐ来ちゃうよ!」
「来るって……化け狸が!?」
何故そんなことがわかるのか。
そう目で問いかけるクリスに日和は上擦った声で答える。
「もうすぐ……食事の時間だから……。そ、そうだ!」
「今度は何?」
「作戦、思い付いたの。あ、あのね……」
日和の提案した作戦。
それを聞いてクリスは耳を疑った。
「本当に、それでいいの?」
「うん、大丈夫だよ。もう慣れちゃったから」
その笑顔が無理に作ったものだということくらい、短い付き合いでも嫌というほどわかった。
けれど、
「もう時間もないし、他に良さそうな手もないでしょ?」
そう言われてしまえば、クリスには反論の余地がない。
「でも、それならいっそ正面から」
勝つためなら何だって利用する、そう普段公言している自分が何を言っているのかとは思う。
当然、そんな言葉では日和の決意は変えられなかった。
こういう時の彼女が度を越すくらい頑固だということは、これもまた短い付き合いの中でも嫌というほどわかっていたことだ。

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